
私は何度か、命の危険にさらされた経験があります。
最後は、数年前のゴールデンウイーク。
失血によるショック状態で、呼吸不全を起こし、
一時期ではあったけれど、人工呼吸器を装着した経験があります。
その時の私は、意識が遠退く中、耳だけは聞こえていて、
嫌なことに、職業柄、自分が、どんな状態なのか
冷静にわかってしまいます。
死んで逝く最期まで
聴覚が残るという話しを聞いたことがありますが、
本当なんだ…と思いました。
それは、突然起こりました。
大学病院に入院中の、夜中の出来事・・・。
もともと、血小板数が低く、出血すると、血が止まりにくい状態の私。
そんな時に大量に出血し、失血性のショックを起こしたのです。
頭痛と吐き気が起きて、血圧が一気に下がり、
自分の手足が痙攣しているのがわかりました。
息が吸えるけど吐けない…
息ができない…苦しい…。
そう思った瞬間、私に着けられていた、器械のアラームが一斉に鳴り出し、
そのアラーム音に気付いて駆けつけた看護師に
『息が出来ない…』と言ったのが最後で、
その後は、言葉がでませんでした。
目を閉じたら死ぬ…という思いで、必死に目を開けようとしていたけれど、目の前は、真っ暗。
でも、音だけは、聞こえていました。
看護師が医者を呼ぶ叫び声。
医者が来て、
『何やってんだ!早くアンビュー持って来い!!』…。
大学だって言うのに、パニックじゃん!
(アンビューとは、人工呼吸の時に必要なバッグです。持ってくるの遅いよ…早くしないと、あたし、死んじゃうじゃん。)
次の瞬間、信じられないことに、そこにいた医者が、
『誰か、医者呼んで来い!』と叫びました…。
運の悪いことに、それは、ゴールデンウイークの真っ只中の夜中。
大学病院と言っても、そこは、三次救急ではなく、二次救急体制。
医者は、当番の交代性で、そこにいたのは、駆け出しのインターン。
気管挿管出来る医者が、いなかったのです・・・。
看護師は、ポケベルで外科医をコールし続けていましたが、
とうとう捕まらず、
アンビューをシュパシュパさせながら、ベテランのナースが
そのDrに、テキパキ指示を出してました。
そのお陰で、私は助かりました。
嘘のような話しです。
でも、私はそのやり取りの全てを、覚えています。
聞こえていました。
・・・意識はなかったとのことです。
意識が戻ってしばらくの間、
私は眠るのが怖くて怖くて仕方がありませんでした。
目を閉じると、もう意識が戻らないような気がして
数日間は眠れませんでした…。
聞こえていたことは、そこにいた人たちには話しませんでしたが、
最期まで耳が残るという話しは、
まんざら嘘ではないんだ…と思いました。
その後、仕事復帰した私は、
死に直面した患者さんにも、意識的に話し掛けるようになりました。
目を開けることはなくても、患者さんの反応があることがあります。
指がかすかに動いたり…。
聞こえているのだと思います。
それから、もうひとつ強く思ったことがあります。
仕事中に、目の前でどんなことが起きても、
慌てず、焦らず、冷静に対処しようという思いです。
それに伴う知識と経験を身につけようと思いました。
あの時、テンパっていたナースとドクターの声・・・。
私は、怖かったな…。
もう少し冷静に対応して欲しかったなと思いました。
すっごく不安で怖かったです。
ゴールデンウイークが近付くと思い出す出来事です。
それ以外の時は、滅多に思い出したりせず、
忘れていますが、私の仕事に対する思いは、
そういう私自身の実体験から成り立ちます。
出来れば、長く続けたいな…。本当に心から思っています。
無理なことは、わかっているのですが、
生涯続けていきたいと思って選んだ職業ですから・・・。
でも、今まで続けられて、悔いはないです。
あとの残った時間で、出来ること、少しずつ
少しずつ、やって行きたいと思っています。
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